ゴールデンスランバー/伊坂幸太郎【読後感想】
伊坂幸太郎さんの「ゴールデンスランバー」を読みました。
やはり、安定の伊坂作品です。
もちのロンで面白かったです(笑)
ストーリーは首相暗殺の濡れ衣を着せられた主人公が追ってくる警察からひたすら逃げる。
道中、友人や元恋人、後輩、裏稼業の男、かつての同僚。様々な人に助けられながら困難を乗り越えていく。
孤独な逃走劇でありながら人の優しさに触れる。
「なぜ自分がこんな目に?」そう苦悩しながらも理不尽かつ強硬的に手段を選ばない警察から逃げ続ける姿は自分に重ね合せるととても怖くなります。
伊坂さんが描く警察ってなんかめっちゃ怖いんですよね。
「火星に住むつもりかい」に出てきた平和警察も怖かった。
こういった権力を持った組織に追われる恐怖。
今思い出しても怖い(笑)
私が読んでいて1番よかったシーンは、花火大会のシーン。
このシーンで主人公は友人に告白をするのですが、その時の2人のやりとりが妙に懐かしく、「昔こんなことあったな〜」的な回想をしてしまいました(笑)
そして事件が一応の解決をみて3ヶ月のエピソードで逃走中に助けてくれた人たちのことがエピローグとして語られます。
このくだりが本当によくて。
特に主人公の両親の話。
本編の中でも両親は出てきていて、その時の父親のセリフがまたいいんです…
マスコミにマイクを向けられて息子に対する思いを語る。息子を信じマスコミと闘おうとするその姿は子を持つ親として胸打たれるものがありました。
「俺は息子を信じてるんじゃない。知ってるんだよ。」
ホントにカッコいい親父さんでした。
ところでみなさん、友達はいますか?(笑)
人並みに生きてきましたが、私には友達がほとんどいません。
学生時代の友人などはかなり疎遠で、たまに遊ぶといえば会社の同僚ぐらいなもので。
この主人公は冒頭で親友を亡くし、頼った後輩は暴行を受け、そんな状況でも自分のために行動したかつての恋人も自分のために傷を負います。
濡れ衣とはいえ、首相殺しの犯人として追われる時になった時、果たして自分のことを信じて助けてくれる友人や仲間がどれだけいるでしょうか?
私はすぐ捕まる自信ありです(笑)
みなさんも友人と家族は大事にしましょう。
さて、ご存知の方もいると思いますが、この作品も映画化されています。
映画の方はまだ見ていないので見たらまた感想レビューしたいと思います。
最後に、私は文庫版を読んだのですが、文庫版には巻末に伊坂さんのインタビューを抜粋した記事が載っています。このインタビューもぜひ読んでいただきたいのですが、単行本の方に載っているかどうか?がちょっとわかりません。
そのインタビューの中で伊坂さんが、
「物語の風呂敷は、たたむ過程がいちばんつまらない。」
というふうにおっしゃっています。
これはつまり物語の伏線を綺麗に回収してスッキリ終わる、ということが「つまらない」とおっしゃっているのですが、伊坂さんはもともと伏線ををいかに綺麗に畳むか?というところにフォーカスしてそのスッキリ感が魅力の作風だったそうです。
ですが、ご自身はそういうストーリー展開が「つまらない」と感じていたらしく、自分の好きなように「畳まず終わる」展開を書いた初めての作品だったそうです。
たしかに伊坂さんの作品ってどこかかすかに「モヤ感」が残るんですよね。
ただそれがいい感じの余韻になって、頭の中で作品のイメージが膨らんでいく。
そういう読後感が残る伊坂作品。
ぜひ読んでみてください。